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特別研究と岡崎コンファレンス 分子研リポート1998 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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2-8 特別研究と岡崎コンファレンス

特別研究は,研究系各研究部門及び研究施設で行われている研究を基盤とし,研究所内外の研究者が協力して行う 独創的かつ開発的な研究であり,特に研究系及び研究施設の枠を超えて,研究者が協力集中して行っている。その発 展に資するため,国際的規模での研究集会−岡崎コンフェレンス−を年2回開催している。

2-8-1 特別研究の経緯

研究所創設以来,4期に亘って下記の特別研究を実施し,現在5期の特別研究を実施中である。 第一期特別研究

(1) 興味ある物性をもつ分子設計の研究(1975 ∼ 1979)

(2) 分子との相互作用に基づくエネルギー変換の研究(1975 ∼ 1979) 第二期特別研究

(1) 分子機能の開発並びに制御に関する研究(1980 ∼ 1984)

(2) 分子過程によるエネルギー移動,エネルギー変換の研究(1980 ∼ 1984) (3) 物質進化の分子科学に関する研究(1982 ∼ 1986 年度)

第三期特別研究

(1) 分子場の設計・構築とそれによるエネルギーの化学的変換の研究(1985 ∼ 1989) (2) 分子素子の基礎研究(1985 ∼ 1989)

(3) 物質進化と自己秩序形成の分子科学(1987 ∼ 1991) 第四期特別研究

(1) 分子制御の化学と物質変換・エネルギー変換に関する研究(1990 ∼ 1994) (2) 分子素子研究の物質科学的展開(1990 ∼ 1994)

第五期特別研究

(1) 機能性反応場の創成と量子ステアリング(1995 ∼5ヶ年計画)

(2) 分子エレクトロニクス:分子性固体場における電子物性(1995 ∼5ヶ年計画) (3) 金属錯体による連続反応場の構築(1993 ∼5ヶ年計画)

2-8-2 第5期特別研究

現在,第5期目の特別研究として次の3件が推進されている。 (1) 機能性反応場の創成と量子ステアリング

(2) 分子エレクトロニクス:分子性固体場における電子物性 (3) 金属錯体による連続反応場の構築

これらの特別研究の内容と実施状況を以下に説明する。

(1)機能性反応場の創成と量子ステアリング

本研究は,多様な分子環境を積極的に創出し,その反応場の機能を明らかにすると共に,反応素過程を支配する主 要因子を見いだし,これを制御することにより反応の道筋を選択・決定(ステアリング)することを目的としている。 実施にあたっては特に次の2つの小テ一マを設ける。1. 多次元的分子系の構築と物質及びエネルギー変換,2. 量子制

(2)

御による新しい反応経路の開拓。

「表面反応場におけるレーザー光化学」の研究では,金属および半導体表面上に単分子層吸着した分子種にレーザー 光を照射することにより誘起される多様な非熱的過程を調べている。本年度は,(1)S i( 100) 表面に吸着した稀ガス

(X e,K r)の光刺激脱離,(2)メタンの表面光化学,について重点的に研究を行なった。前者では,清浄 S i(100)表面 において,稀ガスが近赤外からから紫外に至る広い波長範囲の光照射によって脱離することを確認し,その光反応断 面積の波長依存性と脱離種の並進速度分布を測定した。これには,基盤の光吸収によって生じた電子と空孔がバンド 端まで緩和し,そこで表面状態を介して再結合する時に励起する表面フォノンが重要な働きをしていると結論された。 後者では,銅を基盤として実験を行ない,今まで行なってきた白金やパラジウムなどの遷移金属との比較を行なった。 その結果,C u(111)面でもメタンは 193 nm の光で解離することが判明した。これは,基盤中の sp 電子由来の電子状態 が大きな役割を果たしている可能性を示している。

「レーザー光による原子・分子の並進運動制御とその反応制御への応用」の研究では,前年度に測定した衝突イオン 化断面積の詳しい理論解析を行った。衝突する原子が両方とも準安定3重項励起状態にいるときにヘリウム - 3原子の 断面積がヘリウム - 4原子のそれよりも約3倍大きいことや,レーザー光の存在下ではその差が非常に小さくなること などの理由を明らかにすることができた。超流動液体ヘリウム中の原子・イオンのレーザー分光研究では,レーザー アブレーションによって液体ヘリウム中に分布されたイッテルビウム原子イオンの蛍光スペクトルおよびレーザー誘 起蛍光スペクトルを観測することができ,ヘリウムバブルに閉じこめられた原子やイオンに特有な,励起スペクトル における大きな青方変位や,自由原子には見られない励起スペクトルの分裂,励起状態における強い混合などが観測 された。また,それらのスペクトルの半定量的な解釈も同時に見出した。

「時間分解分光による凝縮相分子ダイナミクスの解明」の研究では,フェムト秒時間分解蛍光分光によるレチナール, 7−アザインドール二量体に対する一連の研究過程から,フェムト秒領域では S1状態からの蛍光のみならず高い電子 励起状態(Sn状態)からの蛍光も一般的に観測されるとの理解にいたった。この理解にもとづき,ポリアセンに対す るフェムト秒蛍光測定を行い,Sn,S1状態両方からの蛍光をそれぞれ時間分解測定することに成功した。フェムト秒 時間吸収分光を用いて,水溶性ポルフィリン C u(II)(T Mpy-P4) の光励起後の緩和過程を研究した。多波長におけるマル チチャンネル測定により,信頼性のあるフェムト秒∼ピコ秒領域の時間分解吸収スペクトルが初めて測定できた。ピ コ秒時間分解ラマン分光により,レチナールの光異性化反応の研究を行った。これによりレチナール分子のシス - トラ ンス光異性化反応機構の全体像が明らかになった。また,アゾベンゼンの光異性化反応を研究し,寿命数ピコ秒の電 子励起状態のラマンスペクトルを測定することに成功した。さらに光パラメトリック増幅(OPA )および差周波発生 を用いて,フェムト秒赤外光を発生させる装置を製作するとともに,前年度放射光施設 UV S OR において製作したピコ 秒レーザーと放射光の同期にもとづく時間分解測定システムを用いて,有機固体試料について時間分解遠赤外スペク トルの測定を試みた。

「化学反応素過程の可視化」の研究では,交差分子線画像観測装置により,エネルギー 66 meVにおける A r と NO の 回転非弾性散乱を研究した。A r が NO 分子の二つの異なる原子,N 端と O 端に衝突するために起こる二重虹散乱を明 瞭に観測すると共に,ある特殊な条件で N 端と O 端の両方に衝突して起こる,多重虹散乱を初めて発見した。光分解 実験では,OC S の光解離動力学を散乱原子の画像観測と量子化学計算によって求められたポテンシャル曲面上での波 束動力学計算と比較し,分子の変角振動によって誘起される非断熱解離を明らかにした。また,フェムト秒レーザー を用いた pump-probe 法と光電子の画像化実験を組み合わせ,時間分解光電子画像化法を開発した。サブピコ秒の紫外 光で NO を A 状態に励起し,さらにサブピコ秒の光イオン化によって光電子が P 波となって空間に放出される様子が

(3)

観測された。この手法は,励起状態の緩和動力学や波束運動を可視化する手法として有望である。また,立体化学の 理論研究では,原子分子の角運動量偏向を多光子吸収によって解析するための量子論,半古典論を構築した。半古典 論については,NO2の光解離によって生成する NO のベクトル相関の解析に適用し,その正しさを証明した。

「スピン副準位による状態の選択」の研究では,高分解能レーザー光とラジオ波の二重共鳴法によるラマンヘテロダ インビート検出磁気共鳴法を展開している。選択的に励起状態を指定してそれに関する磁気共鳴測定ができるという この方法論の特徴を生かして,青いレーザー光を用いた L aF3単結晶にドープされた Pr

3+

イオンの回りの L a 核の NQR 測定や,1,4ジブロモナフタレン単結晶の一重項−三重項吸収遷移を用いた励起三重項状態の E S R 測定を行った。特 に後者はラマンヘテロダインビート測定法を分子系に応用した世界最初の例である。ゼロ磁場分裂した励起三重項状 態の E S R 遷移と,その電子スピンに結合している B r 核の NQR 遷移の信号が得られた。有機分子単結晶でラマンヘテ ロダインビート測定法が応用可能と解ったので,今後本方法の特徴が生かせるような系を選び精力的に応用していく。

「量子力学的 F okker-Planck 方程式による反応場コントロール」の研究では,重要な化学反応の殆どが溶液中でおこる 事を考慮し,凝縮相の効果を考察した。化学反応を解析するためには,レーザー分光の技術が中心的役割をしている が,レーザー場と分子の相互作用は量子過程であり,また,化学反応自体も,非断熱遷移過程や量子トンネル過程等 の量子過程が中心的な役割をしており,量子効果を理解する事が非常に重要である。量子効果自体は波動方程式を解 く事により記述できるが,これに溶媒等の効果を含めようとすると,量子散逸の問題となり,通常の理論で解析する 事は出来ない。特に化学反応の問題は,複雑な形状のポテンシャルで記述される場合が多く,このようなポテンシャ ル下での運動を,溶媒の効果を取り入れ考察出来る手法が望まれる。量子フォッカー・プランク方程式は,このよう な目的に合致した手法であり,任意のポテンシャル面に対する波束の運動を量子的に溶媒の効果を取り入れながら考 察する事が出来る。本年度はこの手法を用いて,強いレーザー光で励起されたモースポテンシャル系の光解離過程と 前駆解離過程について考察し,このような分子系のシュタルク効果と,その波束の運動について考察を行った。

「量子エネルギー変換による化学反応の光ステアリング」の研究では,UV S OR 施設内において開発された軌道放射 光とモードロックレーザーの同期照射システムを用いて,N2または N2O の光イオン化で生成する N2

+

のレーザー誘起 蛍光分光を行った。イオントラップを利用することで,回転線を完全に分離することが可能となったため,回転温度 が精度よく求められた。また,OC S 分子を放射光で超励起し,中性解離で生成した基底硫黄原子をレーザー2光子共 鳴1光子イオン化法で検出することに成功した。いずれのレーザー分光法も,放射光励起された分子から生成する解 離種に対して適応された例はない。高光子密度・高分解能・高干渉性といったレーザーの特長を生かしたこの種のポ ンププローブ分光測定は,真空紫外・軟 X線領域の励起状態の緩和および崩壊ダイナミクスの研究に今後大いに活用 されるものと期待される。

(2) 分子エレクトロニクス:分子固体場における電子物性

究極の機能単位である分子を用いて新しい電子機能を発現する分子の集合体を構築するのが分子エレクトロニクス の研究であるが,この特別研究ではもっと基礎的な立場から,新しい分子の開発とその分子配列から生ずる集合体と しての機能と物性に関する基礎研究を行っている。電気伝導性,磁性,誘電性,光機能性など主に電子物性の立場か ら興味ある分子性固体や液晶物質の研究を行っている。

「有機超伝導体の研究」では昨年,λ-BETS2(Fe,Ga)Cl4で前例のない金属−超伝導−絶縁体転移を見出したが,超伝導 状態はほぼ完全マイスナー状態であることを確認した。又,新たに,F e の磁気秩序とπ電子系の超伝導が競合してい る金属−超伝導−金属転移を示す類似系を見出した。さらに,最近,同様な B E T S 伝導体で,反強磁性有機分子性金属

(4)

を初めて発見した。これらの発見は有機分子性伝導体を舞台とした磁気,伝導物性が急速に発展していることを示す ものである。

「分子性導体における新電子相の探索」では微視的な観点から分子性導体の電子状態を調べ,新規な電子相や新機能 物質を探索することを目的としている。まず,磁化率,E PR ,輸送現象測定により基本的な電子物性を調べ,E PR のg 主値解析,緩和時間測定,選択的同位体置換試料による NMR 測定をおこない,詳細な電子状態ならびに相転移の機構 を理解する。現在,そのために必要な装置を整備しつつ研究を行っている。

「π−d電子系の研究」では金属上に局在スピンをもつCoPc(AsF6)0.5ともたないNiPc(AsF6)0.5のフタロシアニン導体 混晶を作成し,構造,電気物性,磁性,分光法による電子状態の研究を行なっている。π電子とd電子の相互作用の 直接的な観測,C o3d 電子の一次元バンド形成などの興味ある事実が明らかにされた。その他π電子性の分子導体 D MT S A , B E D T -A T D , B D T -T T P の電荷移動塩について反射分光法とラマン分光法を用いた研究を行ない,バンド構造, 金属・絶縁体転移,伝導度スペクトルの形状と電子相関の関係,電荷分離状態についての実験データを集積している。

「低次元強相関系の物性理論」では,擬1次元有機導体 (TMTCF)2X における次元クロスオーバーを,ウムクラップ 過程による電荷局在からのフェルミ面回復という観点で整理した。2次元電子系Bi2Sr2CaCu2O8の擬ギャップを,波数 に依存した準粒子重みの繰込みフローから説明した。強く二量化した2バンド2次元電子系(EtnMe4-nN)[Pd(dmit)2]2を 強結合展開により調べ,その伝導性と磁性を次元性の効果から定性的に理解した。1次元π -d 電子系CoPc(AsF6)0.5の 絶縁相でのスピン揺らぎの役割を求めた。ハロゲン架橋複核白金錯体の電子状態を調べた。銅酸化物超伝導体の同位 体効果を,局所的反強磁性相関を伴うポーラロンの動力学から説明した。ポリマーにおける光誘起分極反転の可能性 を議論し,その安定性を分子動力学計算で確認した。

「新規なドナー・アクセプター分子の合成研究」ではチアジアゾール,ピラジンなどのヘテロ環を有する新規なドナー およびアクセプター分子を合成し,これらを成分とする高伝導性の電荷移動錯体およびイオンラジカル塩を開発した。 また,ヘテロ原子の分子間相互作用を利用して分子テープ状構造やヘリカル構造などの特異な結晶構造を構築した。さ らに,新規なドナー・アクセプター型分子を設計し,小さなHOMO−LUMO差を有する分子を開発した。

「新規分子性強磁性体の開発研究」では,キラル高スピンビスニトロキシドラジカルと常磁性遷移金属イオンの自己 集合組織化を用いて,はじめて光透過性のあるキラルな分子磁性体の構築に成功した。この分子磁性体は従来から知 られている磁気光学効果(ファラデー効果,カー効果)の他に新しい物性として予測されている磁気不斉光学効果を 示す可能性があり,今回合成したキラル磁石について磁気光学効果の研究を進めている。

「液晶における動的秩序構造の研究」では,当研究所において開発した回転四極コイルによる2次元磁場勾配型NMR 分光器を用いて,分子の自己拡散異方性を系統的に調べた。その結果,いくつかのスメクティックA液晶において自 己拡散異方性が温度によって反転することを見出した。また,キラル液晶においてアルキル鎖の著しい捻れを実験的 に検出し,反強誘電性の微視的起源の理解を一歩進めることができた。

「内殻電子をプローブとした分子固体中の励起子の研究」では,一価の場を感じた励起子と二価の場を感じた励起子 の挙動の違いから,分子性励起子の性質を解明する事を目的としている。たとえば内殻吸収スペクトルに現れる内殻 励起子は一価の場を感じた励起子であり,共鳴オージェ過程で一価イオンコアが脱励起した後の内殻励起は,二価の 場を感じた励起子となる。このように内殻電子をプローブとして分子固体の励起子について研究を進めている。

「レーザーと放射光を組み合わせた分子固体の電子状態研究」では,単波長のレーザーと波長連続の放射光という特 徴ある2つの光源を組み合わせた2光子励起蛍光システムを構築し,通常の光学遷移では観測できないパリテイ禁制 の励起電子状態を検出することを目的とした。システムは無事完成し,B aF 2 や C aF 2 の真空紫外領域にあるP型励起

(5)

(3) 金属錯体による連続反応場の構築

巧妙に分子設計した金属錯体を集積配列させ連続反応場を構築し,新しい反応系の開発を行うとともに,新規な物 性・機能を有する物質群の開発を行う。特に,本研究では核酸,タンパクによる高度に御御された反応場を利用した 金属錯体による物質変換,気/水界面での金属錯体の集積による物性の創出,ならびに金属錯体による2分子の二酸 化炭素の活性化を目指して以下の研究を行った。

「金属配位結合により二重鎖を形成する人工 D NA 」の研究では,フェニレンジアミン,アミノフェノール,カテコー ルなど,天然には存在しない,金属配位能を有する核酸塩基を導入した人工ヌクレオシドを設計,合成した。この人 工ヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチドは,水素結合の代わりに金属配位結合により塩基対を形成することを明ら かにした。また,一本鎖 D NA をテンプレートとしてシークエンス特異的に自発集合することが期待される新規金属錯 体,及び二本鎖 D NA の周囲に環状に集合化することが期待される新規金属錯体を合成した。これらの人工 D NA は遺 伝子の機能制御という観点からだけではなく,導電性材料など,新しい機能性分子としての物性発現も期待される。

「金属酸素錯体と生体高分子との反応」では,金属錯体による過酸化水素の活性化に関する基本的,理論的な研究を行 い,活性化の本質はパーオキサイドイオンと不飽和な d- 軌道にある電子との相互作用によって誘導されることを明らか にした。その結果をもとに金属酸素錯体による DNA ,R NA ,蛋白質(特にアミロイド蛋白,プリオン蛋白)の切断・分 解反応の機構を明らかにし,いわゆる神経性疾患(アルツハイマー,プリオン病)の予防を考えたいと思っている。

「遷移金属を活用した自己組織性分子システム」の研究では,小分子からの自己組織過程を経て,ナノサイズに到達 する二次元および三次元構造が組あがる系を見い出した。たとえば,小分子 10 成分から約3ナノメートルに到達する 巨大な環状構造体や,3次元的に閉じた約2ナノメートルの構造体の構築に成功した。また,これらの構造体が内部 空孔に巨大分子(カルボラン等)や複数の有機分子を選択的にとりこむことも明らかにした。さらには,骨格に含ま れる金属核として白金を用いると,得られる三次元構造は酸塩基条件でも安定となり,このような構造体が分子サイ ズの「反応容器」としてつかえる可能性を示した。実際に,自己組織化した三次元化合物の内部空間で,いくつかの 化学反応が促進されることを明らかにした。一方,三次元かご構造同士を内部連結させた「三次元インターロック化 合物」の自己組織化にも成功した。このような錯体の分子認識機能を利用することで,感知機能や分離機能を有する 機能性分子,さらには新規な合成反応や触媒反応の開発が期待できる。

「プロトン濃度勾配からのエネルギー変換」では,アクア金属錯体が,溶液のプロトン濃度に従いヒドロキシ及びオ キソ錯体に変化することを利用して,外部回路を通じて,これらの錯体間に酸化還元反応を起こさせることにより,pH 勾配を直接電気エネルギーに変換することに成功した。

「金属錯体による二酸化炭素の活性化」の研究では,金属に単座配位したナフチル配位子が極めて容易に還元され, フリーの窒素が強い塩基に変化することを利用して,二酸化炭素由来の R u-C O 結合にナフチル配位子を可逆的な架橋 させて,R u-C O 結合の還元的開裂による C O 発生の抑制と R u-C O 基の活性化を同時に行うことに成功した。その結果, ナフチル配位子を有するR u金属錯体を触媒として4級アルキルアンモニュム塩を電解質とする二酸化炭素の電気化学 的還元反応では,全く副反応を伴うことなく,ケトンのみが選択的に高速で生成する反応系を完成させることに成功 した。

子状態の測定に成功した。その結果,励起子の束縛エネルギーや価電子−伝導帯間のエネルギーを正確に決めること が出来た。さらに内殻準位を2光子励起した場合についても研究を進行中であり,カスケード過程や共鳴過程などの 興味有る現象が検出されつつある。

(6)

岡崎コンファレンスは分子科学研究所の特別研究の一環として 1976 年に始められ,すでに63回に達している。コン ファレンスの性格はこの会の提案者であった赤松秀雄初代所長の次の言葉につきる。

“ 会議は研究発表を主旨とするものではなく,共通の興味と問題に関して,いわば思索の過程において相互に経験や 意見を交換することを主旨とする非公式の会合である。そのためには,参加者相互の信頼と尊敬が基調となるもので あって,会議は非公開であり,また参加者の意見は当人の許可なくして公表してはならない。(赤松秀雄,分子研レター ズ,1 号より)”

この方針は今日まで貫かれており,討論の場であることが明記されている。コンファレンスの主題は全国の研究者 の提案を受けて選考し,採択された主題の提案者を中心とした世話人に,外国人招待者を含めたすべての運営を一任 することにしている。その分野で活発に研究を行っている第一線の外国人研究者と国内の研究者がひざをまじえて非 公式に論議を交わすことによって,問題に対する意識を深め展望を拓く契機となっている。またそこで形成された人 間関係は研究面のみならずあらゆる面で大きな影響を及ぼしている。若い研究者を刺激し彼らの研究意欲をかきたて ていることも重要である。1999 年 3 月現在で 63 回開催され,その成果は内外の研究者から高く評価されている。

1976 年 1 月に行われた第1回岡崎コンファレンスから第 62 回までの参加研究者総数は約 3,214 名,その内外国人研 究者は約 286 名である。参加者はノーベル賞受賞者を含む研究の第一線に立つ研究者であり,毎回活発な議論が重ね られてきた。また外国人研究者の重複招待者は 10 周年記念の岡崎コンファレンスを除くと皆無であった。これは課題 の選択が「十分に議論し尽くせるように限定した内容とする」ことが徹底したことと分子科学の広い視野からなされ たことによると考えられ,今後ともこの方針で進められる。

開催一覧1(回 課題,開催日,提案代表者) 1.「光電極過程」1976.1.14 ∼ 1.16

坪村  宏(大阪大学教授)

2.「分子設計の基礎としての理論化学」1976.2.15 ∼ 2.18 土方 克法(電通大学教授)

3.「分子固体における運動自由度」1976.2.15 ∼ 2.18 千原 秀昭(大阪大学教授)

4.「共鳴及び非線型ラマン散乱」1977.1.18 ∼ 1.20

坪井 正道(東京大学教授) 田隅 三生(東京大学教授) 5.「分子・分子結晶の高エネルギー励起状態」1977.12.4 ∼ 12.7

田仲 二朗(名古屋大学教授)

6.「興味ある物性をもつ有機半導体−その電子構造の解明を求めて」1978.2.13 ∼ 2.15 佐野 瑞香(電通大学助教授) 井口洋夫(分子研教授)

7.「高分解能分子分光の現状と将来」1978.9.4 ∼ 9.5 廣田 榮治(分子研教授)

8.「原子・分子・固体表面間の相互作用」1979.2.19 ∼ 2.21 諸熊 奎治(分子研教授)

2-8-3 岡崎コンファレンス

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9.「反応性中間体の分子設計−カルベン種を中心として」1980.1.7 ∼ 1.9 岩村  秀(分子研教授)

10.「分子性結晶の励起子ー輸送過程の見地から」1980.2.4 ∼ 2.6 井口 洋夫(分子研教授)

11.「分子内ポテンシャル研究の展望」1980.12.3 ∼ 12.5

鈴木 功(筑波大学教授) 町田勝之輔(京都大学助教授) 田隅 三生(東京大学教授)

12.「化学及び生化学過程における遷移金属錯体の役割」1980.12.11 ∼ 12.13 高谷 秀正(分子研助教授)

13.「短寿命分子とイオンー星間過程におけるその役割」1981.9.8 ∼ 9.10 齋藤 修二(分子研助教授)

14.「光化学反応初期過程」1981.10.20 ∼ 10.22

又賀  昇(大阪大学教授) 吉原經太郎(分子研教授)

15.「分子線によって生成する分子及びクラス夕ーの分光学と動力学」1982.11.15 ∼ 11.17 伊藤 光男(東北大学教授) 近藤  保(東京大学助教授)

茅  幸二(慶應大学教授) 木村 克美(分子研教授) 花崎 一郎(分子研教授)

16.「分子の動的挙動に対する磁場効果」1983.1.17 ∼ 1.19 林  久治(理化学研究所主任研究員)

17.「芳香族性と芳香族化合物」1983.9.26 ∼ 9.28

村田 一郎(大阪大学教授) 井口 洋夫(分子研教授) 18.「化学反応機構の理論の現状と将来」1984.1.19 ∼ 1.21

西本吉助(大阪市立大教授)

19.「宇宙空間における分子の形成と進化」1984.3.19 ∼ 3.21 花崎 一郎(分子研教授)

20.「機能化界面を用いた光化学的電子移動」1984.8.18 ∼ 8.20 田伏 岩夫(京都大学教授)

21.「特異な電子状態を有する金属ボルフィリン及びヘムタンパク質の物性」1985.1.29 ∼ 1.31 小林  宏(東京工業大教授) 北川 禎三(分子研教授)

22.「E X A F S とその物性への応用」1985.3.18 ∼ 3.20 黒田 晴雄(東京大学教授)

23.「分子科学 10 年,進歩と将来動向」1985.5.7 ∼ 5.8 井口 洋夫(分子研教授) 廣田 榮治(分子研教授)

24.「凝一次元系に於ける新物性の展望−電荷移動と電子−格子相互作用」1985.12.12 ∼ 12.14 辻川 郁二(京都大学教授) 丸山 有成(分子研教授)

三谷 忠興(分子研助教授) 那須奎一郎(分子研助教授)

(8)

25.「光異性反応の動的過程」1986.1.16 ∼ 1.18

伊藤 道也(金沢大学教授) 廣田  襄(京都大学教授) 閑  春夫(群馬大学教授)

26.「星間空間及び彗星における分子過程」1986.6.26 ∼ 6.28

花崎 一郎(分子研教授)  小谷野猪之助(分子研助教授) 齋藤 修二(分子研助教授) 西  信之(分子研助教授) 27.「高スピン分子とスピン整列」1986.9.8 ∼ 9.10

伊藤 公一(大阪市立大教授) 岩村  秀(分子研教授) 28.「極端紫外光による物性化学」1987.2.5 ∼ 2.7

井口 洋夫(分子研教授) 渡邊  誠(分子研助教授)

29.「イオン−イオン並びにイオン−溶媒相互作用に関する分子論的考察」1987.5.26 ∼ 5.28 大瀧 仁志(東京工業大学教授) 齋藤 一夫(国際基督教大学教授)

大峯  巌(分子研助教授)

30.「化学過程における電子のダイナミックス」1987.10.28 ∼ 10.30 田仲 二朗(名古屋大学教授) 吉原經太郎(分子研教授) 31.「気相クラスターのイオン化過程」1988.2.10 ∼ 2.12

朽津 耕三(東京大学教授)

32.「励起分子の化学挙動についての理論化学」1988.9.27 ∼ 9.29 笛野 高之(大阪大学教授)

33.「生化学分子の前生物的合成とキラリティの起源」1988.12.1 ∼ 12.3 原田  馨(筑波大学教授)

34.「燃料における化学反応」1988.12.20 ∼ 12.22

神野  博(京都大学教授) 幸田清一郎(東京大学助教授) 林  光一(名古屋大学講師)

35.「金属クラスター化合物の合理的合成と金属多中心骨格構造に基づく協同現象」1989.5.23 ∼ 5.25 齋藤 太郎(大阪大学教授) 山崎 博史(理化学研究所主任研究員)

伊藤 翼(東北大学教授)  磯邊  清(分子研助教授) 36.「水素ー電子結合系での物性の創造」1989.11.13 ∼ 11.15

三谷 忠興(分子研助教授)榎 敏明(東京工業大学助教授) 中筋 一弘(分子研教授)

37.「酸性物高温超伝導体─ その物質と超伝導機構─」1990.2.13 ∼ 2.15 田仲 二朗(名古屋大学教授) 武居 文彦(東京大学教授) 北沢 宏一(東京大学教授)

38.「生体系金属錯体の構造と動的側面」1990.10.16 ∼ 10.18

山内  脩(名古屋大学教授) 森島  績(京都大学教授) 北川 禎三(分子研教授)

(9)

39.「分子素子を目指した機能分子の開発とその組織化」1990.10.25 ∼ 10.27 清水 剛夫(京都大学教授) 小林 孝嘉(東京大学助教授) 丸山 有成(分子研教授)

40.「非線型化学反応と自己秩序形成」1991.2.23 ∼ 1.25

北原 一夫(東京工業大学教授) 中村 宏樹(分子研教授) 吉川 研一(名古屋大学助教授) 花崎 一郎(分子研教授)

41.「有機反応過程研究における理論化学と物理有機化学との接点」1991.9.30 ∼ 10.2 速水 醇一(京都大学教授),西本 吉助(大阪市立大教授)

野依 良治(名古屋大学教授) 42.「分子科学:現状と将来」1992.1.7 ∼ 1.9

井口 洋夫(分子研所長) 正畠 宏祐(分子研助教授) 中村 宏樹(分子研教授)

43.「レーザー光電子分光の新展開」1992.3.10 ∼ 3.12 木村 克美(分子研教授)

44.「化学反応理論の新しい展開」1992.11.4 ∼ 11.6

諸熊 奎治(分子研教授)  中村 宏樹(分子研教授) 中辻  博(京都大学教授) 岩田 末廣(慶應大学教授)

45.「金属錯体における分子内及び分子間電荷移動の化学」1992.12.8 ∼ 12.10 中村  晃(大阪大学教授) 大瀧 仁志(分子研教授)

46.「シンクロトロン放射による分子科学研究の現状と将来の展望」1992.12.16 ∼ 12.18 正畠 宏祐(分子研助教授) 渡邊  誠(分子研助教授)

鎌田 雅夫(分子研助教授) 磯山 悟朗(分子研助教授) 47.「緩和現象における溶媒の動力学効果」1993.10.5 ∼ 10.7

吉原經太郎(分子研教授) 岡田  正(大阪大教授)

48.「分子設計されたフタロシアニン錯体を用いた分子素子の探求」1994.1.26 ∼ 1.28 籏野 昌弘(東北大教授) 藥師 久彌(分子研教授) 丸山 有成(分子研教授) 49.「超臨界流体中に生成するクラスターの構造とダイナミックス」1994.3.16 ∼ 3.18

梶本 興亜(京都大教授) 冨宅喜代一(分子研助教授) 大峯  巌(分子研助教授)

50.「電子欠損型遷移金属錯体の機能」1994.8.1 ∼ 8.3

巽  和行(名古屋大教授) 高橋  保(分子研助教授) 51.「表面における光誘起過程のダイナミックス」1994.10.5 ∼ 10.7

村田 好正(東京大教授) 松本 吉(分子研助教授) 52.「実験室及び天分サブミリ波分光」1995.3.14 ∼ 3.16

斎藤 修二(分子研教授)

53.「スピン化学の新展開」1995.10.19 ∼ 10.21

林  久治(理化学研究所主任研究員) 廣田  襄(京都大教授) 佐藤 博保(分子研教授)

(10)

(第 61 回までの外国人招待研究者は、これまでの「分子研リポート」を参照) 54.「水素原子移動反応の動力学的研究」1996.1.23 ∼ 1.25

閑  春夫(群馬大教授)

55.「生体機能発現における金属蛋白質の作用機構」1996.2.5 ∼ 2.7 干鯛 眞信(東京大教授) 渡辺 芳人(分子研教授) 56.「凝縮相中の量子動力学;化学系への応用」1996.9.27 ∼ 9.29

C oalson, R ob D .(ピッツバーグ大学) 谷村 吉隆(分子研助教授) 57.「呼吸鎖末端化酵素の反応場と作動機構」1996.10.28 ∼ 10.30

茂木 立志(東大理教授) 小倉 尚志(分子研教授) 58.「分子性伝導体研究の現状と将来の展望」1997.3.7 ∼ 3.9

小林 速男(分子研教授) 藥師 久彌(分子研教授)

59.「無機化合物を構成要素とする機能性積層膜の分子構築とその機能」1997.8.7 ∼ 8.9 山岸 皓彦(北海道大学教授) 芳賀 正明(分子研教授)

60.「化学反応ダイナミクスの光制御」1997.9.22 ∼ 9.24

藤村 勇一(東北大学教授) 川崎 昌博(京都大学教授) 61.「時間分解振動分光による液体ダイナミクス」1998.1.21 ∼ 1.23

富永 圭介(分子研助手) 奥村  剛(分子研助手) 斉藤真司(名古屋大学助手)

開催一覧 2

回 課題,開催日,提案代表者 外国人招待研究者

2 6

階 的 造 構 る け お に 学 科 子 分

ク ミ ら か 造 構 ゾ メ

・ ノ ナ

: 層

」 で ま 造 構 ロ

0 1 . 1 . 9 9 9

1 ∼1.13

) 授 教 大 東

( 三 卓   田 相

) 授 教 助 研 子 分

( 誠     田 藤

. r J , k e b e R s u i l u

J (スクリップス研究所教授)(アメリカ) n

a m r e m m i Z . C n e v e t

S (イリノイ大学教授)(アメリカ) n

o t l i m a H . D w e r d n

A (イェール大学教授)(アメリカ) e

t l o N . M . J d n a l e o

R (ナイメージェン大学教授)(オランダ) o

k t o r o w a Z . J l e a h c i

M (ウィンニペグ大学教授)(カナダ) t

r a d d o t S r e s a r F .

J (カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)(アメリカ) r

e k w a H . J g i a r

C (IBMアルマデン研究センター教授)(アメリカ) e

r o o M . S y e r f f e

J (イリノイ大学教授)(アメリカ) d

o o w t r A . L y r r e

J (ミズーリ大学教授)(アメリカ) r

e l l u M m i h c

A (ビエルフェルド大学)(ドイツ) n

a n a H . S y r r a

G (ウォータールー大学教授)(カナダ) m

i K n o o m i

K (ポハン大学教授)(韓国) t

h c e H n a f e t

S (カリフォルニア大学教授)(アメリカ) c

e c r e P l i g r i

V (ケースウェスタンリザーブ大学教授)(アメリカ) t

s e u W . D s e m a

J (モントリオール大学教授)(カナダ) e

e L o o s g n o y

M (ヨンセイ大学教授)(韓国) e

g a v u a S e r r e i P - n a e

J (ルイパスツール大学教授)(フランス) t

d u o h n i e R . N d i v a

D (トゥエンテ大学教授)(オランダ) k

r a m i a N y d n e

W (カリフォルニア工科大学助手)(アメリカ)

3 6

ー レ の ー タ ス ラ ク 子 分 相 気

ッ ミ ナ イ ダ と 造 構

− 光 分 ー ザ

− 点 接 の ス ク

3 2 . 3 . 9 9 9

1 ∼3.25

) 大 北 東

( 之 孝   幡 江

) 研 子 分

( 明 正   井 藤

r e l y w t u e L l e u m a

S (ベルリン大学)(ドイツ) r

e s s u e N . J s n a

H (ミュンヘン工科大学)(ドイツ) t

h c e r b l A . C . s a e r d n

A (コーネル大学)(アメリカ) s

a e h t n a X . S . s i t i r o

S (パシフィック・ノースウェスト研究所)(アメリカ) s

n n a m r e n i e l K l r a

K (デュッセルドルフ大学)(ドイツ) p

p o T l e a h c i

M (ペンシルヴァニア大学)(アメリカ) n

e n e a L t r e b o

R (ミュンヘン工科大学)(ドイツ) f

u a k n i e W r e n i a

R (ミュンヘン工科大学)(ドイツ) x

u e d r a L - r e d n o d e D e d u a l

C (パリ南大学)(フランス)

参照

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